外国為替の相場予測

NO.07

「DVD 外国為替の相場予測」

テキストより

◆外国為替相場の変動要因

10)アセット・アプローチ

アセット・アプローチ(ポートフ才リオ・アプローチ)は、ある時点でのストック量(外貨建て資産、邦貨建て資産など)の需給関係に注目するものである。二国間の金融資産市場を均衡させるように為替レートが決まるとするもので、最も効率的な内外金融資産保有残高比率を実現する(ストックの均衡)ように外国為替相場は決定されるとする。つまり、外国為替相場は各国通貨建て金融資産交換比率ということになる。これに従うと、経常収支は為替相場に影響せず、金利の変化と外国為替変動予測が外国為替に影響することとなる。

ここでは、金利として何を取り上げるのかという間題が残っている。実質金利差のほうが各国金利差よりも相場の方向性をうまく説明できるようだが、現場の取引はやはり名目で行われることが多い。
 さらに、基本的には、スワップ・レートは全利差によって決まるのであるから、金利差が変動した段階では、すでにフォワード・レートに金利差は織り込まれてしまっているということも考え併せねばならないだろう。

ドル・円レートを見る限りにおいては、1981年以降、金利差が大きな影響をもってきたと考えられるが、為替の変動リスクと金利差を比べた場合、単純に高全利通貨を買うかどうか、このニつがどの程度の強さで関連しているかは一概には言えないだろう。理論的には直接投資と金融取引を分けて考察させねばならない。しかも、金利差要因による資金の動きは循環的でもある。全利差では説明できない時期もあり、しかも、統計的に意義のある推計式が得られないという欠点もある。

 

11)政治との関係

経済学は政治とは不可分なものであると考えられている。たとえば、購買力平価説でも、人、物、全の移動が容易でなければ成立しない。何らかの規制があれば、移動は容易ではないし、場合によっては、それがすべてを決定してしまうことだってある。大きな枠組を決めるのは、やはり政治経済の構造であろう。その意味で外国為替相場においても政治は非常に重要なファクターといえる。

たとえば、昭和50年代に日本の経常収支が黒字に転換し、その時にダーティー・フロートだと避難を浴びたのも政治が重要なファクターであったからだ。その後、ドイツが苦い経験をすることになる機関車論も政治と経済の結び付きの強さに基づいた発想だ。もっとわかりやすい例では、法改正で資本の流出入が自由になったり、逆に規制ができたりする状況を考えてもらえばよい。あるいは、ドイツの利子源泉課税間題。最近では国際的な政策協調や欧州通貨制度の混乱を考えれば、いかに政治が重要かはわかる。

 

12)通貨政策

1971年のニクソン・ショック以来、カーターのドル防衛、プラザ合意などの例でもわかるように、大勢や中勢の相場動向は米国の意向によって決まるといっても過言ではありません。その意味でも米国の通貨政策は相場を予測するうえで重要なポイントとなります。

さて、通貨政策に対する考え方(外国為替市場に対する立場)は、変動相場制度支待か固定相場制度支持か、また、自由市場を是とするか、介入を容認するかといったことで区分されます。

現実には、変動相場制度のもとでは、ある程度の介入は容認せざるを得ないという人が多いでしょう。その背景には「為替レートの変動は貿易収支の調整に役立つ」「通貨政策は有効」という考え方があるからです。

こうした考え方の標準となるのが、マサチューセッツ・アベニュー・モデルです。このモデルは狭義の計量モデルというだけでなく、国際マクロ経清の考え方だと思ってよいでしょう。為替相場を読む鍵の1つはこのモデルにあるといえます。マサチユーセッツ・アベニユー・モデルという単語は知らなくても、このフレームワークを使っている人は多いのです。


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▼ 林康史プロフィール

林 康史(はやし・やすし)

立正大学経済学部教授/法学修士。

主な担当分野

【学部】金融論、国際金融論、証券論、中国金融。

【大学院】金融特論、金融特殊研究。

 

大阪生まれ。大阪大学法学部卒。法学修士(東京大学)。クボタ、住友生命保険、大和証券投資信託、あおぞら銀行(職務経験は、輸出営業、原価管理、為替ディーラー、エコノミスト、ストラテジスト等)を経て、2005年から現職。華東師範大学(客員教授)、一橋大学(非常勤講師)、日本学生支援機構 機関保証制度検証委員会(委員長)等。その他、評論活動等。

 

主な著書・訳書
『株式投資 第4版』『基礎から学ぶデイトレード』(監訳)『マネーの公理』(監訳)以上、日経BP社、『決定版 株価・為替が読めるチャート分析』『ジム・ロジャーズ中国の時代』(共訳)『人生と投資で成功するために娘に贈る12の言葉』(監訳)『欲望と幻想のドル』(監訳)以上、日本経済新聞出版社、『欲望と幻想の市場』(訳)『相場のこころ』(訳)以上、東洋経済新報社、他。DVDに、『テクニカル分析を極める短期集中講座』(全4巻=8本)『相場で勝つための心理学』『解説!デイトレード 第1巻』『BS―JAPAN 相場の心理学(上・下)』、他。

 

現在の研究テーマ

(1)金融システム・金融法

(2)マーケットストラクチャー・価格形成メカニズム

(3)行動ファイナンス

(4)パーソナルファイナンス

(5)金融教育

(6)ドル化

(7)貨幣論・地域通貨

(8)マイクロファイナンス

(9)商品論

(10)石橋湛山

 

主な研究実績
(1)共著(木下直俊・林康史)

「“ドル化”国の中央銀行の役割と政策」全国銀行協会『金融』(第800号)2013年11月

(2)共著(林康史・木下直俊)

「ドル化政策実施国における金融政策―エクアドル・エルサルバドル・パナマの事例―」『経済学季報』(第64巻第1号)2014年7月

(3)共著(林康史・歌代哲也・木下直俊)

「エクアドル・エルサルバドルの補完通貨UDIS」『経済学季報』(第64巻第2・3号)2015年1月

(4)共著(林康史・劉振楠)

「グラミン銀行とマイクロファイナンスのコンセプト―奨学金制度のビジョン再検討のために―」『経済学季報』(第64巻第4号)2015年3月

(5)共著(畠山久志・林康史・歌代哲也)

「外国為替証拠金取引規制―わが国におけるFX取引の沿革と現状―」『経済学季報』(第65巻第1、2、3・4号)2015年8月、11月、2016年3月

(6)単著

「貨幣とは何か」『貨幣と通貨の法文化』第11章、国際書院 2016年9月

(7)共著(潘福平・林康史)

「人民元の為替相場制度の変遷」『21世紀資本主義世界のフロンティア』第5章、立正大学経済研究所研究叢書31巻 2017年3月

(8)単著

「経営とガバナンスから見た食の安全―日本・中国・韓国の比較―」『経済学季報』(第67巻第2・3号)2017年12月

(9)共著(木下直俊・林康史)

「オデブレヒト汚職事件と中南米諸国への影響」『経済学季報』(第67巻第4号)2017年3月

(10)共著(歌代哲也・林康史)「ベネズエラの共有通貨Panal」『経済学季報』(第67巻第4号)2017年3月

 

所属学会

日本金融学会、金融法学会、法と経済学会、法文化学会、行動経済学会、FP学会