外国為替の相場予測

NO.06

「DVD 外国為替の相場予測」

テキストより

◆外国為替相場の変動要因

7)ケインズの美人投票

心埋とマーケットについては、ケインズの美人投票のアナロジーがよく知られています。簡単にいうと、美人投票で、自分が誰のことを1番きれいだと思うかは関係なく、他の投票者が誰を選ぶかを考えるという話です。100人の写真のうち美女を6人選び、その選択が投票者全体から見て平均的だった人に貫晶が与えられるという新聞投票に相場は似ているとケインズはいいます。

つまり、自分はAさんがきれいだと思っていても、Bさんの方がきれいだと思う人が多いだろうと予想すれば、その人は他の投票者の好みに合うであろうBさんを選択しなければならないのです。しかもどの投票者もすべて同じ見方で、この間題を眺めている--これが美人投票のアナロジーです。実際に一番きれいな人が選ばれるとは限りません。Aさんが最も美人だと考えたとしても、Bさんが勝つだろうからBさんを選ぶ--つまり、勝ち馬に乗るということです。これがマーケットだとケインズはいっているわけです。

相場では、他人がどう予測するかを予測することが大事になってきます。他人が他人の予測をどう予測するかということです。美人ではない人が選ばれる可能性も低いわけです。マーケットも同じで、ファンダメンタルズとまったく関係のない相場になるかというとそうでもありません。
 重要なのは、相場を動かす材料の選定やその動向予測にあるのではなく、それを市場参加者たちがどう判断すると考えるかということです。そういう面で参加者の心理の読み方がポイントになってくるのです。

 

8)コントラリー・オピニオン

ある材料(要因)を過大評価し、相場が大きく片方に振れることがある。それがバブル現象である。逆に、セオリーと反対方向に動くことをコントラリー・オピニオンというが、いずれも、為替心理説で説明される。「消化難」や「情報の織り込み済み」という言葉も同様のことを示したものである(これは合成の誤謬といってもよいかもしれない。人混みの中で、つま先立ちすれば向こう側が見える。しかし、全員が、つま先立ちすれば元の黙阿弥で、次はジャンプするか、馬鹿らしくなってつま先立ちをやめるかのいずれかということになる)。当局の政策が有効となるケースも実は市場の心理によるところが大きいのである。

また、経済指標の発表時に見られるような相場の急変は、為替心理説をおいては説明がつかない。諸説にあっては、そのような経済指標の発表がなくとも、相場はそちらに動くはずであり、それが瞬時にして変動するのは、そうした理論では説明がつかないのである。相場はデマでも動く。はっきりデマとわかるまでは、それなりの行動が要求される。情報は事実かどうかの確認が難しい。もし、本当だったら大変なことだと判断すれば、あらゆるディーラーは、本当だったら、という仮定のもとで行動する。そうすれば、それがあたかも真実のように相場が動いてしまうという結果になるのである。

相場は市場にある期待(不安)に反応する。驚異的パフォ-マンスを誇るヘッジ・ファンドのスペキユレーターとして知られたジョージ・ソロスは(料来に対する偏った見通しを反映しているという意味において、相場は常に間違っている)と言ったが、正しい予測も市場参加者が正しいと思った瞬間に正しいものではなくなるのである。

 

9)噂・風説

たとえば「昨日、米系ヘッジ・ファンドの総帥ジョージ・ソロスがドル売り円買いをしていた」などのルーマー(噂)がマーケットに出ることがあります。外国為替市場はテレフォン・マーケットですから、風説が伝わっていく様はまるで伝言ゲームのようです。しかし、一殺の市場参加者が他のビッグ・プレーヤーの動向を知ることなど、果たして可能なのでしょうか。


ルーマーを伝えてくれたディーラーに感謝しつつ、私は次のように考えます。「私だったら自分のポジションを他人に知られるような下手な手は打たない。であれば、私よりも賢いに違いないソロスが、自分の本当のポジションを他人に知られるような動きをするはずもない」と。

ソロスの立場になって考えるのです。伝説の相場師W‐D‐ギャンは祖年ほど前にこういっています。「相場操縦者が誠実で自己の利益のために働いているとするなら、自らが株を買い集めていると言い触らすことなど期待できない」「ポーカーをしているとき、こちらが手の内を見せないのに相手が手の内をさらけ出してくれることを期待できるだろうか」(『W‐D‐ギャン著作集』より)

実際、ソロスは口の堅い銀行で望むポジションをとりつつ、日の軽い銀行で反対のポジションを小日でとるようです。ポジションが大きくなると、そういう動き方も必要になるのです。

また、ソロスの動向が正しく伝わってきたとします。しかし、その情報に価値があると思う人は相場に向いていません。私の経験からいって、大玉だから相場が動くというものではありません。逆に、小玉でも相場に乗ることはできるのです。世の中には、まるでソロスと友人であるかのように書き、喋る人がいます。


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▼ 林康史プロフィール

林 康史(はやし・やすし)

立正大学経済学部教授/法学修士。

主な担当分野

【学部】金融論、国際金融論、証券論、中国金融。

【大学院】金融特論、金融特殊研究。

 

大阪生まれ。大阪大学法学部卒。法学修士(東京大学)。クボタ、住友生命保険、大和証券投資信託、あおぞら銀行(職務経験は、輸出営業、原価管理、為替ディーラー、エコノミスト、ストラテジスト等)を経て、2005年から現職。華東師範大学(客員教授)、一橋大学(非常勤講師)、日本学生支援機構 機関保証制度検証委員会(委員長)等。その他、評論活動等。

 

主な著書・訳書
『株式投資 第4版』『基礎から学ぶデイトレード』(監訳)『マネーの公理』(監訳)以上、日経BP社、『決定版 株価・為替が読めるチャート分析』『ジム・ロジャーズ中国の時代』(共訳)『人生と投資で成功するために娘に贈る12の言葉』(監訳)『欲望と幻想のドル』(監訳)以上、日本経済新聞出版社、『欲望と幻想の市場』(訳)『相場のこころ』(訳)以上、東洋経済新報社、他。DVDに、『テクニカル分析を極める短期集中講座』(全4巻=8本)『相場で勝つための心理学』『解説!デイトレード 第1巻』『BS―JAPAN 相場の心理学(上・下)』、他。

 

現在の研究テーマ

(1)金融システム・金融法

(2)マーケットストラクチャー・価格形成メカニズム

(3)行動ファイナンス

(4)パーソナルファイナンス

(5)金融教育

(6)ドル化

(7)貨幣論・地域通貨

(8)マイクロファイナンス

(9)商品論

(10)石橋湛山

 

主な研究実績
(1)共著(木下直俊・林康史)

「“ドル化”国の中央銀行の役割と政策」全国銀行協会『金融』(第800号)2013年11月

(2)共著(林康史・木下直俊)

「ドル化政策実施国における金融政策―エクアドル・エルサルバドル・パナマの事例―」『経済学季報』(第64巻第1号)2014年7月

(3)共著(林康史・歌代哲也・木下直俊)

「エクアドル・エルサルバドルの補完通貨UDIS」『経済学季報』(第64巻第2・3号)2015年1月

(4)共著(林康史・劉振楠)

「グラミン銀行とマイクロファイナンスのコンセプト―奨学金制度のビジョン再検討のために―」『経済学季報』(第64巻第4号)2015年3月

(5)共著(畠山久志・林康史・歌代哲也)

「外国為替証拠金取引規制―わが国におけるFX取引の沿革と現状―」『経済学季報』(第65巻第1、2、3・4号)2015年8月、11月、2016年3月

(6)単著

「貨幣とは何か」『貨幣と通貨の法文化』第11章、国際書院 2016年9月

(7)共著(潘福平・林康史)

「人民元の為替相場制度の変遷」『21世紀資本主義世界のフロンティア』第5章、立正大学経済研究所研究叢書31巻 2017年3月

(8)単著

「経営とガバナンスから見た食の安全―日本・中国・韓国の比較―」『経済学季報』(第67巻第2・3号)2017年12月

(9)共著(木下直俊・林康史)

「オデブレヒト汚職事件と中南米諸国への影響」『経済学季報』(第67巻第4号)2017年3月

(10)共著(歌代哲也・林康史)「ベネズエラの共有通貨Panal」『経済学季報』(第67巻第4号)2017年3月

 

所属学会

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