外国為替の相場予測

NO.04

「DVD 外国為替の相場予測」

テキストより

◆外国為替相場の変動要因

1)需給

価格は需給で決まる。需給で相場は動く。外国為替相場も例外ではない。外国為替の需給が外国為替相場を決定するというと単純にすぎるようだが、相場は需給以外では動かないというのが外国為替相場予測の原点である。ただし、相場の真の需給の把握は実は不可能だろう。この需給もゼロ=サムの間題と固様に奥深い間題である。

他者にさきがけて、ひとり今月の需給がわかれば今月の相場の方向性がわかる。今日の需給がわかれば今日の相場の方向性がわかる。今から1時間の需給が今から1時間の相場の方向性を決める--とされる。一般に、市場参加者は断片的需給を知りたがる。銀行が大手の機関投資家に打たれたがるのは何もマゾヒストだからではない。けれども、市場の全員が将来の需給を知ったとたんに、方向性が読めるかどうかは疑間となるし、もちろん、その瞬間の需給では将来の相場の均衡水準はわからない。価格が動いた次の瞬間には需給は当初の需給から市場で売員が成立した分を差し引いた残差ではない。超短期的ディーリングのポジションは、成約した瞬間に反対売買の必要が生じる。需要と供給が瞬時にして入れ代わるわけだ。また、価格が変化したことによって買う気がなくなったり、売るのを控えたりするようになる。

需要供給曲線で説明される通りである。価格が上がれば売り手が増え、売買の二-ズのアンバランスが大きくなって価格は低下圧力を受ける。売買の二-ズが均衡するのが均衡価格であるが、実際にはその水準を探りながら非模索過程を続けることになる。

大きな枠組みとしては、その通りである。しかし、人はそれほど合理的には動かない。私見だが、市場参加者の相場に対するアクションは四つのパターンがある。「上がったから売る」「下がったから買う」ばかりではない。「上がったから買う」「下がったから売る」という二-ズも生じるのである。たとえば、絵画・骨童晶など必ずしも売買が必要でないもので考えてみよう。上がったから買いたくなって、下がったのに買いたくなくなることは、意思決定のプロセス上、決して異常とは言えないだろう。それは絵画だからであって、たとえば、生活必需品では起こらないと思われるかもしれない。しかし、外国為替などでも日常的に経験することなのである。需給が価格を決めるが、価格が需給にも影響するのである。蛇足ながら、気配値についても述べておく。右のように考えると気配値も価格の一種である。ゼロ=サムと関連することだが、気配値も次の実際値を決めると考えられる。気配値のみで上昇あるいは下落し続けることもありうるわけだ。そう考えると需給とは何かということになる。価格は需給で決まる。ただし、一般に行われている需給による相場予測は徒労に終わる可能性が高いだろう。あみいは需給が読めると思うこと自体が不遜なのかもしれない。

 

2)ファンダメンタルズ

外国為替の変動は、株や債券と比較して、その読みがかなり難しいことで知られる。その理由は、外国為替相場が国内の経済上の間題ばかりでなく、国際経済や政治動向などにも左右されやすいからだろう。最初から結論めいてしまうが、全ての商品のなかで最もファンダメンタルズから遠い?ファンダメンタルズそのものの把握が困難といってもよい)のが外国為替相場ではなかろうかと思う。

外国為替相場変動には、幾つもの要因が存在する。それらの説には古くから唱えられていたものもあれば、比較的新しいものもある。これから、その主な説を取り上げて、個別に概説するが、その前にファンダメンタルズについて触れておく。

ファンダメンタルズという言葉をよく耳にするが、実のところ、あまり定義のはっきりしない概念である。経済の基礎的条件のことといっても具体性には乏しい。たとえば、1987年のベネチア・サミットでは構造改革を進めるにあたって7つの指標を掲げたが、それは、財政収支、経常収支、GNP、インフレ率、内需、金融情勢、為替レートであった。これらがファンダメンタルズの全てとはいわないまでも、当時、主要な経済の基礎的条件だと考えられていたものではあったろう。ところが、1986年の東京サミットでは、GNP、インフレ率、金利、失業率、財政赤字率(対GNP比)、経常収支、貿易収支、通貨供給量(伸び率)、支払い準備(リザーブ)、為替レートの10指標がサーベイランスのインディケーターに挙げられていたのである。こうして考えていくと、ファンダメンタルズというものは可視的に捉えられるようなものでなく、一般に列挙される指標というのも、実はファンダメンタルズの影でしかないということがわかる。

また、これらの指標を見て気づくように、こうした指標のなかで外国為替と金利は相場として成立している(価格があって売買できる)点が重要である。この二つは統計資料ではなく、誤差が入らない存在であるととにも、とくに外国為替の場合、重相関というか、自己が自己を決める要因でもあるわけだから話がややこしくなる。

ファンダメンタルズが何を指すかは議論が分かれる。累積経常収支と内外実質金利差などを指すという意見もある。一般的には、原則、ファンダメンタルズとは、経済成長率、物価、国際収支、失業率の4つの経済指標の総体といってよいのだろうが、文字通り、本当に基本的なもの、「経常収支」と「物価」と考えることも可能である。経常収支に注目したのが、国際収支説であり、物価に注目したのが購買力平価説である。

3)経済指標

市場が注目する経済指標には流行があること、「織り込み済み」で指標発表前の思惑で既にポジションができていることや「材料難」「材料未消化」で反応しないこと、また、後になって見直ざれたりして反応が遅れて出ることがある。一概には、どの指標が重要で、それによってどのように反応するのかということはいえないのである。市場の受け取り方にも、指標を額面通りにとる場合と、それによる金融政策の変化を予想する場合がある。指標の絶対値そのものよりも市場は変化のほうを見ることが多いということも知っておくべきだろう。たとえば、絶対額では大きな経常赤字が続いていても明らかに滅少傾向が見られる時などである。また、外国為替相場は多国間で成立するものではあるが、米国の指標が重要視ざれる。

以下、米国の主な指標を列挙すると、雇用統計(失業率、非農業部門就業者増加数等)、NAPM(全米購買担当部長のアンケート調査)、住宅着工建設許可数、住宅着工件数、設備稼働率、鉱工業生産、PPI(生産者物価指数)、CPI(消費者物価指数)、耐久財受注、個人所得・個人消費支出、景気先行指標、マネー・サプライ、小売売上高、貿易収支、連邦財政収支、GDP(国内総生産)。


NO.01

NO.02

NO.03

NO.04

NO.05

NO.06

NO.07

NO.08

NO.09

NO.10

NO.11

NO.12

NO.13

NO.14

NO.15

NO.16

⇐ 戻る

TOP

次へ ⇒

林康史DVD

▼ 林康史プロフィール

林 康史(はやし・やすし)

立正大学経済学部教授/法学修士。

主な担当分野

【学部】金融論、国際金融論、証券論、中国金融。

【大学院】金融特論、金融特殊研究。

 

大阪生まれ。大阪大学法学部卒。法学修士(東京大学)。クボタ、住友生命保険、大和証券投資信託、あおぞら銀行(職務経験は、輸出営業、原価管理、為替ディーラー、エコノミスト、ストラテジスト等)を経て、2005年から現職。華東師範大学(客員教授)、一橋大学(非常勤講師)、日本学生支援機構 機関保証制度検証委員会(委員長)等。その他、評論活動等。

 

主な著書・訳書
『株式投資 第4版』『基礎から学ぶデイトレード』(監訳)『マネーの公理』(監訳)以上、日経BP社、『決定版 株価・為替が読めるチャート分析』『ジム・ロジャーズ中国の時代』(共訳)『人生と投資で成功するために娘に贈る12の言葉』(監訳)『欲望と幻想のドル』(監訳)以上、日本経済新聞出版社、『欲望と幻想の市場』(訳)『相場のこころ』(訳)以上、東洋経済新報社、他。DVDに、『テクニカル分析を極める短期集中講座』(全4巻=8本)『相場で勝つための心理学』『解説!デイトレード 第1巻』『BS―JAPAN 相場の心理学(上・下)』、他。

 

現在の研究テーマ

(1)金融システム・金融法

(2)マーケットストラクチャー・価格形成メカニズム

(3)行動ファイナンス

(4)パーソナルファイナンス

(5)金融教育

(6)ドル化

(7)貨幣論・地域通貨

(8)マイクロファイナンス

(9)商品論

(10)石橋湛山

 

主な研究実績
(1)共著(木下直俊・林康史)

「“ドル化”国の中央銀行の役割と政策」全国銀行協会『金融』(第800号)2013年11月

(2)共著(林康史・木下直俊)

「ドル化政策実施国における金融政策―エクアドル・エルサルバドル・パナマの事例―」『経済学季報』(第64巻第1号)2014年7月

(3)共著(林康史・歌代哲也・木下直俊)

「エクアドル・エルサルバドルの補完通貨UDIS」『経済学季報』(第64巻第2・3号)2015年1月

(4)共著(林康史・劉振楠)

「グラミン銀行とマイクロファイナンスのコンセプト―奨学金制度のビジョン再検討のために―」『経済学季報』(第64巻第4号)2015年3月

(5)共著(畠山久志・林康史・歌代哲也)

「外国為替証拠金取引規制―わが国におけるFX取引の沿革と現状―」『経済学季報』(第65巻第1、2、3・4号)2015年8月、11月、2016年3月

(6)単著

「貨幣とは何か」『貨幣と通貨の法文化』第11章、国際書院 2016年9月

(7)共著(潘福平・林康史)

「人民元の為替相場制度の変遷」『21世紀資本主義世界のフロンティア』第5章、立正大学経済研究所研究叢書31巻 2017年3月

(8)単著

「経営とガバナンスから見た食の安全―日本・中国・韓国の比較―」『経済学季報』(第67巻第2・3号)2017年12月

(9)共著(木下直俊・林康史)

「オデブレヒト汚職事件と中南米諸国への影響」『経済学季報』(第67巻第4号)2017年3月

(10)共著(歌代哲也・林康史)「ベネズエラの共有通貨Panal」『経済学季報』(第67巻第4号)2017年3月

 

所属学会

日本金融学会、金融法学会、法と経済学会、法文化学会、行動経済学会、FP学会