外国為替の相場予測

NO.03

「DVD 外国為替の相場予測」

テキストより

◆外国為替相場の変動を読む

2) セクター・ローテーション

自然科学的アプローチと言ってもいいのだが、現実に実証できる科学とそうでない科学がある。経済学というのは実証不可能な科学である。ここまではわかるけれどもここから先はわからないというような場合も多い。イエスかノーかがはっきりしているような学間でもない。まったく同じ条件を与えても反対のシナリオを思い描くこともできるわけだ。「とりもちと理屈はどこにでもつく」というのは相場格言かしらんと思うほどだ。

しかし、もちろん、これは理論が成り立たないという意味ではない。やはり何らかの法則はある。宇宙の予言可能性を述べたアインシュタインに「神はサイコロ遊びをしない」というのがあるが、相場も同じだ。現在は因果関係がはっきりわかっていなくても、原理があって相場が動いているには違いないのである。また、マーフィーの法則であっても一定の期間は立派にセオリーとして通用している場合もある。

何度となく聞かされることで、そう思うようになることもある。心理学では熟知性の法則というが、たとえば、ある通貨が買われているのは金利が高いからだとずっと聞かされ続けると、金利が最重要に思えてくるということもあるだろう。

現在はマネー・サプライを材料視することが流行だけれど、昔は貿易収支で一瞬に何円も動いていた。そして、その前はマネー・サプライがやはり重要指標だった。そういった変遷がいろいろあるが、実はその時たまたま市場関係者の間でその材料がビッグ・アップざれていたにすぎないともいえるのである。たとえば歴史の中で考えると貿易収支が為替マーケットの主役だった時期は結構短い。これは、株式市場関係者の言葉をもじって、材料のセクター・ローテーションと言えるかと思う。

いずれにせよ、相場の動向を的確に把握するにはマーケットが取り上げる材料と自分が材料視するものとを一致させ、同じ立場で取り上げるしかないということだ。たとえば、当局が何を見て、どう動こうとしているのかを読むというのがFEDウォッチャー、B0Jウォッチャーというわけだ。これなど当局に夕-ゲットを絞った材料のセクター・ローテーションといえる。また、マーケット自身が情報をどれだけ評価するかである。他のファクターとのバランスも考えなくてはならない。

 

3)景気・金利・物価

ここでは、一般的にいわれる経済・社会メカニズムと外国為替相場の関係について述べる。すでにマーフィーの法則の項で述べたように、以下に記す考え方が唯一の解というわけではない。個人的には馴染まない発想も含まれる。また、ここで記す関係は、あえていえば生態系での食物連鎖のようなものであり、実際には一列に繁ったものではなく、むしろ、網の目のように絡み合っている。景気と金利と物価も相互に影響を与え合う。

①景気と外国為替相場

景気が拡大すると、その国の通貨は上昇する。国際競争力が増して貿易収支の黒字拡大(赤字縮小)、資本収支でも直按投資が活発となる。金利も上昇しやすく投資面での魅力も増す(くどいようだが、これもひとつのモデルにすぎない。たとえば、内需拡大による景気だと貿易黒字は滅少となる。)。

二国間で考えてみる。日本の景気が変わらずに、米国景気が拡大すれば、景気拡大による金利の上昇から米国の全利商品購入需要が増大し、日本からの資本移動が増える。ドル買い円売りに繋がりやすい。

ただし、米国の実質GDPが発表されて、伸びていることがわかった時に出るドル買いは思惑にすぎない。詳しくは国際収支説で述べる。
逆に、外国為替相場が景気に与える影響を考える。輸出企業は自国通貨が上昇すると自国通貨での手取りが滅少する。それを補うためには価格引上げが必要となり、国際競争力が滅退する。一般的には輸出意欲も滅退する。輸入では輸出のケースの逆が起こる。自国通貨が上昇すると輸入活動は活発化する。つまり、両面あるわけだ。日本では、基本的には円高は不況に繋がりやすいと考えられる。

②金利と外国為替相場

金利の上昇から金利商品購入需要が増大するとしたが、金利が上昇すれば、資全吸収力が増して、その国の通貨は上昇するという。米国の金利が上昇した場合、米国の全利商品の魅力が増し、資本が流れる。資金運用面でも日本で調達しドル転した方が有利となる。ただし、私見では、企利差自体が資本の流れを変えるというのは疑間が残る。為替と全利とどちらの変動が大きく影響するか考えると明らかだろう。外国為替相場が金利相場に与える影響を考える。これは傾向として認識しなければならない。つまり、ドル高になったからどうなるというより、今後もドル高が続くという思惑があれば資本が動くと考えるわけだ。さらなるドル高があるとすれば、米国の金利商品を購入しておけば儲かるから購入が増大し、そして、それは米国金利の低下傾向になる。

③物価と外国為替相場

購員力平価だと、物価上昇は当該通貨の購買力を押し下げるから通貨は下落することとなる。逆に、自国通貨高になると輸入物価は低下、自国通貨安になると輸入物価は上昇する。国内の競合製品も連られて上下する。

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▼ 林康史プロフィール

林 康史(はやし・やすし)

立正大学経済学部教授/法学修士。

主な担当分野

【学部】金融論、国際金融論、証券論、中国金融。

【大学院】金融特論、金融特殊研究。

 

大阪生まれ。大阪大学法学部卒。法学修士(東京大学)。クボタ、住友生命保険、大和証券投資信託、あおぞら銀行(職務経験は、輸出営業、原価管理、為替ディーラー、エコノミスト、ストラテジスト等)を経て、2005年から現職。華東師範大学(客員教授)、一橋大学(非常勤講師)、日本学生支援機構 機関保証制度検証委員会(委員長)等。その他、評論活動等。

 

主な著書・訳書
『株式投資 第4版』『基礎から学ぶデイトレード』(監訳)『マネーの公理』(監訳)以上、日経BP社、『決定版 株価・為替が読めるチャート分析』『ジム・ロジャーズ中国の時代』(共訳)『人生と投資で成功するために娘に贈る12の言葉』(監訳)『欲望と幻想のドル』(監訳)以上、日本経済新聞出版社、『欲望と幻想の市場』(訳)『相場のこころ』(訳)以上、東洋経済新報社、他。DVDに、『テクニカル分析を極める短期集中講座』(全4巻=8本)『相場で勝つための心理学』『解説!デイトレード 第1巻』『BS―JAPAN 相場の心理学(上・下)』、他。

 

現在の研究テーマ

(1)金融システム・金融法

(2)マーケットストラクチャー・価格形成メカニズム

(3)行動ファイナンス

(4)パーソナルファイナンス

(5)金融教育

(6)ドル化

(7)貨幣論・地域通貨

(8)マイクロファイナンス

(9)商品論

(10)石橋湛山

 

主な研究実績
(1)共著(木下直俊・林康史)

「“ドル化”国の中央銀行の役割と政策」全国銀行協会『金融』(第800号)2013年11月

(2)共著(林康史・木下直俊)

「ドル化政策実施国における金融政策―エクアドル・エルサルバドル・パナマの事例―」『経済学季報』(第64巻第1号)2014年7月

(3)共著(林康史・歌代哲也・木下直俊)

「エクアドル・エルサルバドルの補完通貨UDIS」『経済学季報』(第64巻第2・3号)2015年1月

(4)共著(林康史・劉振楠)

「グラミン銀行とマイクロファイナンスのコンセプト―奨学金制度のビジョン再検討のために―」『経済学季報』(第64巻第4号)2015年3月

(5)共著(畠山久志・林康史・歌代哲也)

「外国為替証拠金取引規制―わが国におけるFX取引の沿革と現状―」『経済学季報』(第65巻第1、2、3・4号)2015年8月、11月、2016年3月

(6)単著

「貨幣とは何か」『貨幣と通貨の法文化』第11章、国際書院 2016年9月

(7)共著(潘福平・林康史)

「人民元の為替相場制度の変遷」『21世紀資本主義世界のフロンティア』第5章、立正大学経済研究所研究叢書31巻 2017年3月

(8)単著

「経営とガバナンスから見た食の安全―日本・中国・韓国の比較―」『経済学季報』(第67巻第2・3号)2017年12月

(9)共著(木下直俊・林康史)

「オデブレヒト汚職事件と中南米諸国への影響」『経済学季報』(第67巻第4号)2017年3月

(10)共著(歌代哲也・林康史)「ベネズエラの共有通貨Panal」『経済学季報』(第67巻第4号)2017年3月

 

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