テイラーと短期サイクル

ジョージ・ダグラス・テイラーは短期トレーダーとしては伝説的存在であり、その技法はーたとえば晩年頃のギャンが編み出した特殊技法のようにー手書きコピーが特にシカゴの場立ち達によって珍重されてきた。

テイラーの「短期相場観察法」は、現在実践的短期トレーダー(リンダ・ブラッドフォード・ラシュキをその代表とする)に絶大な支持をされている一方、「ブック・キーピング」のテクニックは「殆ど読むに足らない」(by リンダ・ブラッドフォード・ラシュキ)と酷評されている。

テイラーの「相場観察法」

計算式・トレードタイミング

テイラーの相場観察法は、相場を基本的に3つのタイプに分けることから始める。

それは「買いの日」「売りの日」「空売りの日」であり、おのおの循環しているという(つまり「買いの日」の次は「売りの日」であり、「売りの日」の後は「空売りの日」、そしてまた最初の「売りの日」からカウントしていく)。

買いの日

買いのポジションを作成する日である。「買いの日」とは日中で前日の安値を下回るないしは同じレベルが最初に付き、その後上伸する日である。単純に云えは安値寄り高値引けの日である。

前日は「売りの日」であったことーすなわち、高値寄付安値引けの下げであったことが必要である。安値は、最初の1時間以内に付くのが理想的であるが(むろん寄付から一気に上伸する方が望ましい)、一日の最初の3分の1タイムフレームでつくのがギリギリ、引け際での急騰ではディ・トレーダーとしては極めてきついマーケットとなってしまう。

仕掛けの成功は、引けが寄付の水準を上回ることである。そうでなければ、大引けで手仕舞うこと。「買いの日におけるフラットマーケットは翌日の弱さを示す。危険である」(テイラー)。

売りの日

前日のポジションを利食う日である。

「通常、利益の拡大が見込める」(テイラー)はずであるが「寄付が前日終値より低く、前日の上伸幅が崩れだしてきた場合、戻り売りを仕掛け」、また「上伸しても、その日の安値引けとなりそうな場合も戻り売りをすべき」、という。

「崩れだした場合」も「安値引けとなりそうな場合」もトレーダーごとの感覚でしかなく、十人十色であろう。テイラーの概念はーリンダ・ブラッドフォード・ラシュキも指摘していることだがー一般に感覚的で明確なルールがない。

あえてルール化すればベイルアウト(寄付での手仕舞い)がベスト。でなければ3分の1タイムフレーム、すなわち寄付から午前中程度までの間に利食いをする必要があろう。むろん、上昇トレンドにあれば力強い上伸が見られるかもしれず、ストップを引き上げるという戦法も考えられるが、ラリー・ウィリアムズの技法からは単純に寄付で手仕舞った方が確率的な勝率は上がる。

空売りの日

1または2日間の上伸後、売りのポジションを仕掛ける日。「買いの日」とは正反対に、最初に前日の高値ないしは高値近辺を推移した後、下げに転ずる。相場の3分の1タイムフレームないしは半分で日中レジスタンスが明らかになるからそこにストップを置く(通常その日の高値)。

仕掛けの成功は、理想的には安値引けであるが、引けが寄付より下回れば、翌日に持ち越す。利益の拡大が予想できるからである。その場合,翌日の「買いの日」が利食いの日(つまり手仕舞い・仕掛けの日)となるだろう。

逆に「仕掛けが成功しても、日中に大きく戻したり乱高下する場合素早く利食うことだ。引けが戻る場合も良くない」。「この日のレンジをよく見ておく必要がある。「買いの日」の仕掛けレベルの判定となるからだ」。「引けに急伸した場合、翌日の「買いの日」は“切り上がった安値”で買いを仕掛けるしかないが、通常“切り上がった安値での買い”は利益が上がる」。

ここで注意が必要なのは、テイラーも単純に買いの日、売りの日、空売りの日を機械的に行っているわけではないことだ。テイラーもトレンドの判定や季節サイクルを重視していたのである。

「上昇トレンドでは買いの日が2または3日連続する」ことがあり、空売りの日は「次の空売りの日迄現れないことがある」。すなわち、6日に1回程度しか、売りから入れなくなる可能性が高い。一方、上昇トレンドにおいては空売りの日が連続する傾向があり、買いの日は「ラリーが小さく、長続きしない」。重要なのは下落トレンドにおける「下落幅の帳消し」、上昇トレンドにおける「ラリーの消滅」である。

すなわち、下落トレンドは「小さい戻りと大きな下落」のセットアップであり、上昇トレンドは「小さな押しと大きなラリー」のセットアップである。であるならば、空売りの日の下落幅を買いの日の上昇幅が「帳消し」に出来た場合、トレンドは変調しているのではないか?

テイラーはその答えを「下落幅ゼロ」(DECLINE ZERO)と定義してトレンド転換を考えている。この場合、下落トレンドにおいてもラリーのスプレッド、すなわち上伸幅は大きくなる傾向がある。一方、上昇トレンドにおける「買いの日」の上伸幅が「空売りの日」の下落幅で「消滅」させられた場合もートレンド転換迄考えなくともー下落は大きくとれる可能性がある、という。

<ユーロ2000年1月6日~13日 時間足>

Bが買いの日、Sが売りの日、SSが空売りの日である。

 

買いの日は安値が最初に付いている。その後上伸して高値をつけるが、寄付より下げて引けている。引け前に寄付を下回っているので、利喰えていなければ、トレードは損失となった可能性が高い。この日は典型的な「上伸幅の消滅」であり、売りがワークする可能性が高い。

次の日は売りの日で、高値が先に付いている。SSの日は、寄りが高値で、その後急落している。テイラーの概念通りである。引けは寄りを下回ったので、持ち越しとなる。

注意が必要なのだが、この日下落幅の半値以上を戻している。翌日は寄付直後の安値が最高の利食い場であった。さて買いの日は、安値が最初に付き、サポートへの「試し」が行われ(この段階でテイラーの言う“切り上がる安値”を形成した)、高値引けする。

この日もポジションを持ち越す。翌日のSの日は利食いを考え、翌々日のSSでは最初の2時間が戻り高値である。大引けも軟調で更にトレードを持ち越す。理想的な3日リズムが存在していることが分かる。


日経平均ティックチャート

12月15日(DEC15)はSS(空売りの日)である。但し、寄付を下回らず、不調である。次のBは戻りから始まってテイラーの戦略である前日の安値近辺-BU(バイイング・アンダー)-戦略がとれない。やっと午前中に前日安値近辺まで戻す。空売りの日が不調だったので、ラリーはあり得る。翌日は高く寄付、利食い。

20日もセオリー通り、安く引けた。21日のBも申し分ない。次の日は通常利食いである。ストップを持ち上げれば大きく利喰えただろうが、ベイルアウトではこの上伸はついていけなかっただろう。この日は、一日が終われば(終わってみなければ分からない)、完全なB―すなわち、買いの日であった。これで、「買いの日」が2日続いたことになる。

27日のSSも殆ど下げ幅を取り戻している。強い。28日の買い、29日の本来ならばSも上昇時間長く、安値寄り高値引けの形でBとなる。すなわちB-B-S-SSが2回転するわけだ。もっとも2回目のBの上伸幅は前回のBより縮小してきた。30日は利食い、31日はショートセリングだが、実際には年末でポジションは取らなかった可能性の方が高い。結果的にはテイラーの修正カウントは偉大であった。

1月5日は年末4日分の上げを消しての寄付、「買いの日」であるが、寄付を戻せず手仕舞い、次の日は大幅下落。結局、SSが3日間連続したという感がある(赤線)。1月7日は安値から寄り付き、上伸して終了している。B―買いの日―である。

 

3日サイクルといえばワイルダーも、代表的著作「テクニカル分析の新概念」の「トレンドリアクションシステム(ピボット・ポイントとして知られる)」の紹介の中で「買いの日」「利食いの日」「売りの日」と取引日を3つに分類している。

ピボットは基本的には日足ベースでの反トレンド法であるから、トレンドのリアクションポイントに来た時点で反対側のポジションを取っていくのである。

なお、残念なことではあるが、このシステムは相場のサポート・レジスタンスの解明という意味で時に驚くほど有効であるが(特に為替市場において)、ワイルダーのオリジナルコンセプトシステムでは殆ど相場に勝てない(検証では殆どマーケットで勝率45%以下、トータルの損益はマイナス、ドローダウンも大きい-となってしまう)。

土曜日が営業日であった頃、相場を3日タームで見る見方は決してテイラーの独創ではなく、本邦においても3日足や3日ブレイクアウトシステムが商品相場に存在していた。3日相場のサイクル論・観察法は1週間の営業日が6日であったとき、サイクルの概念からしても調和的ではあった。

すなわち、3日観察法は1週間サイクルのハーフサイクルであり、週間サイクルとも矛盾しない。しかし、もし相場が1週間を基本リズムとしているのならば3日サイクルは2.5日サイクルないしは5日サイクルに変調しているのではないか。

1週間における営業日数の変更は、少なくともラリー・ウィリアムズのバイアステクニックに与える影響は大きかった。土曜日の営業廃止が、金曜日や月曜日に強いストレスをかけていることがいろいろな研究で解明されているからである。


上記掲載内容はプレミアムMAX 金融レポートで連載した「新トレーディング手法解説バージョン(2012年9/17号~2018年1/30号)」から抜粋、テーマ別にわかりやすく編集しています。