短期チャートパターン

ラリー・ウィリアムズに指摘されるまでもなく、中期のパターンはほとんどランダムウォークで描くことが出来る。さらに中期パターンはいかようにも解釈可能であり、逆を言えばいかようにも描くことが出来てしまう。頼りにしたいのは、このようなパターンではなく、今日このポジションを僅かでも収益とする確率の高い短期チャートパターンである。極論すれば中期のチャートパターンがどうであろうが、全く関係はない。統計的に勝率が上がるパターン以外は見る必要すらないであろう。

従って、短期のチャートパターンに注力することとしたいが、重要なことは短期のチャートパターンにもあまりにも多くの誤解(または迷信)が残っている、ということである。詳しくはラリー・ウィリアムズの著作やシュワッガーの著作「シュワッガーのテクニカル分析」をご覧いただきたいが、特に重要なのはーシュワッガーも述べているとおり、ローソク足のパターンは少なくとも短期トレーダーにとってほとんど有効ではない、ということだ。

「ローソク足は…サイエンスと言うよりはアートに近い」(シュワッガー)。ここでシュワッガーが述べているサイエンスとはいかなるものか全く判明しないが、少なくとも勝率を上げるのに役立ちそうなものとは云えないようだ。すべてのトレーダーにとって、損益は芸術よりも重要だ。であれば、有効ではないパターン認識をしてしまうリスクのあるローソク足は書くべきではなく、また見るべきでもない、と考える。さらに、ギャップやリバーサルディ、スパイク等も、それだけを頼りにトレードをなすべきではない。

最も強力な短期チャートパターンは第一にラリー・ウィリアムズのウップスシグナル、つぎに同じくラリー・ウィリアムズのスマッシュ・ディリバーサル、隠れたスマッシュ・ディとなる。やや中期のパターンとも云えるが、「スペシャリストの罠」がラリー・ウィリアムズの短期パターン認識では最も優れたものであろう。

ラリー・ウィリアムズの大好きな「安く引けたアウトサイドディ」は、かなり相場を選ぶ。ここでは少しモダンなテクニシャンであるトム・デマークの代表的な短期パターンは以下の5つである。

A) TD OPEN

B) TD OPEN2・3・5

C) TD TRAP

D) TD CLOP

E) TD CLOPWIN

TD OPENについてはラリー・ウィリアムズのウップス(OOPS)と全く同じパターンである。


TD OPEN2・3・5

計算式・トレードタイミング

トム・デマークは、ウップスが2,3,あるいは5日前のバーに対しても有効だと述べている。ウップスの成立には、ギャップを開けたオープン(始値)、前日のレンジにはいる戻り、というのが必要なパターンであった。

TD OPEN2

矢印で示した日のバー(レンジ)が非常に重要になるわけだが、前日(図では1)に対してはギャップを開けたオープンとはなっていない。つまりウップスシグナルは出なかったわけである。

しかし、2日前、5日前とのバーと比較すれば11月つまりデマークは、2,3,5日前とのバーの比較においてもウップスが成立する、と見なす。

矢印のバーは5に対しても、3に対してもギャップを開けて始まり、2・3のバーに対してはウップスが成立、5に対しては成立しなかった。参入レベルは、2の日の高値であり、ロスカットは当日の高値となる。結局、18848で売り、19020がストップで、良いトレードが出来たことになる。


TD OPEN2・3・5

1に対してはギャップを開けた始値となっていない点は、上記同様。2,3,5に対してはギャップ・オープンである。しかしながら、2,3,5いずれのバーの高値レベルにも1月4日の安値は到達しなかった。従って、ウップス2,3,5としては参入機会はなかったわけである。

なお、スマシュ・ディ・リバーサルが成立し、18937が売りのポイントになっている。実際にはシカゴを利用しなければ18900円台がついた可能性は殆どないが、リバーサルとなっているのを知っているのと、そうでないのではアドバンテージは相当違う。


TD TRAP

計算式・トレードタイミング

TD TRAPとは「捕らわれた始値」という意味。

 

①TD TRAP 売り反転

始値は、前日のレンジ内から始まる。TD TRAPはギャップが無いという意味で、TD OPENないしはウップスと対照的なフォーメーションといえる。ポイントは、前日のレンジである。レンジを突破したところが、売買のポイントとなる。実務上は、ストップを置く形でのポジション・メイクとなる。つまり、ディトレードのなかでは、ウップスと対照的に極めて順バリなシステム、と考えられる。

②TD TRAP 買い反転

買い反転も前日のレンジの中に始値があり、前日のレンジを抜けたところがストップバイイングとなる。

実例

AのバーとBのバーを比較してほしい。Bの始値はAのレンジ内から始まっている。その後Aの安値18937をブレイクし、TD TRAP ダウンサイドリバーサル成立(すなわち売りシグナル)となった。

翌日もTD TRAPが成立しているが、BのバーがWS7であったことを考えると、ブレイクアウト戦略の一つであるTD TRAPを仕掛けるのはやや危険と云える。実際、大引けベースでは何とか収益になったものの、ベイルアウト(翌日の始値まで持ち越し)をおこなうと、損益は殆ど期待できない。

2(Aのバーの2本前)はNR4であるから、1におけるTD TRAPはおそらく、ONでポジションを持ち越せたであろう。

Aのバーも、1に対してTD TRAPを成立させている。ただし、1のバーは、2に対して「高く引けたアウトサイドディ」であり、注意が必要であった。結局、Aは行ってこいであったから、短期トレーダーの細やかな相場観察が、功を奏した、ということが出来よう。

実はこのTD TRAPはリンダ・ブラッドフォード・ラシュキの「値幅収縮」戦略のIDやNR4の条件を取り去った極めてシンプルなものと考えることが出来る。


TD CLOP

計算式・トレードタイミング

TD TRAPに更なる条件が付くパターン。

TD CLOP DOWN

始値は、前日のレンジかつ前日の実体(始値-終値レンジ)よりも、高く始まり、前日の実体を下抜ける。前日の終値または始値のいずれか低い価格がポジションを作成するレベルとなる。

前日の寄付レベルがポジションを作るレベル(買いはこの逆)。単純に「実体のブレイク」または「実体」の抜け(理想的には実体を包む)というフォーメーション。


TD CLOP UP

価格が前日の「実体」(始値―終値)のレンジを抜けた時点で買い。

始値は前日の「実体」(終値―始値)のレンジを下回る。

実例-1

1,2のバーにおいて、TD CLOP DOWNが成立している。

すなわち、1の実体より、2の始め値は高く、レンジは1の実体を突き破っている。

従って、フォーメーションを知っていれば、1の終値(青い線)が参入価格である。さらにTD TRAPが同時に成立しているが、その場合、参入価格は前日のレンジ下限(安値)となるので、赤い線まで待たねばならない。

 

実例-2

aのバーに対して、bのバーがTD CLOP(売りシグナル)となっている。

なお、翌日以降IDが続き、dのバーがID/NR4、eでブレイクアウトしている。eはTD TRAP DOWNにもなっている。

 

実例-3

1のバーは、aに対して、TD CLOPとなっている。すなわち、aの実体より低く寄付き、aの始値を上回った(同時にTD TRAPも成立している)。

その後、2でウップス(TD OPEN)が成立、3では孕んだものの、再び4でウップスが再点灯、ギャップを開けた暴落となった。天井圏において最初のウップスが失敗に終わるケースがあるが、2度目は殆どのケースで成功する。

トレードに百戦百勝が存在しないようにウップスも完全無欠ではない。だからこそ、このパターンにかけ続けなければならないのであって、次のケースに仕掛けない、というのは大きな機会損失となってしまうであろう。

大切なのは、5,6のバーである。実際に2,4のダブル・ウップスに売り損ねても、6のバーが5に対して、TD CLOPとなっている。TD TRAPに比べ、かなり良い位置から売れている点に留意されたい。


TD CLOPWIN

計算式・トレードタイミング

TD CLOPWINは、他のデマークのフォーメーションより若干複雑となる。

① UPSIDE REVERSAL

短期フォーメーションとしては、3本の観察が必要となる。

<条件1>A・Bのバーの比較において、Aの実体(始値―終値のレンジ)にBの実体(終値―始値のレンジ)が孕む(はらむ)(はらむ)こと。

<条件2>Bのバーにおいて、終値はAのバーより高いこと。

<条件3>Cのバーにおいて、Bの終値以上の価格で取り引きされること。

Bの終値が仕掛けのレベルであり、デマークは「ローリスク買いゾーン」すなわち「比較的安全な買い場」という。

② DOWNSIDE REVERSAL

①の全く反対となるのだが、念のため解説しておこう。

<条件1>Aの実体に、Bの実体が孕む(はらむ)。

<条件2>Bの終値はAより低い。

<条件3>Cにおいて、Bの終値以下で取り引きされること。

デマークは、Bの終値を「ローリスクセルゾーン」、すなわち「比較的安全な売場」としている。

TD CLOPWINの検証と終値の条件

終値の条件(売りの条件として前日の終値が前々日の終値より低いこと、買いの条件として前日の終値が前前日の終値より高いこと)がどう作用するかを見てみよう。

他の有効な短期パターン同様、TD CLOPWINも、売りサイド優位である。終値の条件についてであるが、概して条件付けしない方が勝率・平均利益ともに高かった。

もっとも、基本的にはこのパターンは為替市場では有効でない(その意味ではTD CLOPとも通ずる)。あるいは東京のみ、ロンドン市場のみ、といったケースでは有効である可能性もあるが為替相場の参加者が実質3市場を通じてポジションを持つことを考えれば、非現実的であろう。

為替相場については、TD CLOPWINとTD CLOPは忘れた方が良さそうである。

債券相場に関してはTD CLOP同様十分に使用に耐えるパターン。

 

終値の条件が変わる、ということはどういうことなのか。

TD CLOPWINの条件は「実体の孕(はら)み」であった。したがって、終値のフォーメーションは実体が孕む(はらむ)という中で

① 最初のバーの終値が低く、次のバーの終値が高い(陰線に対する陽線孕み)

② 最初のバーの終値が低く、次のバーの終値も低い(陰線に対する陰線孕み)

③ 最初のバーの終値が高く、次のバーの終値が高い(陽線に対する陽線孕み)

④ 最初のバーの終値が高く、次のバーの終値が低い(陽線に対する陰線孕み)

の4つのケースしかない。

おのおの終値の位置を考えると

① 孕んだ方の終値の方が高い

② 孕んだ方の終値の方が高い

③ 孕んだ方の終値の方が低い

④ 孕んだ方の終値の方が低い

となる。

したがって、孕みにおいては終値の位置を決定するのは事実上最初のバーの「実体」がどちらになるか次第なのである。そしてTD CLOPWINとは実は最初のバーに対する「逆バリ」フォーメーションに他ならない。

終値の条件を付けることで排除されるトレードとは売りの場合①、②であり、買いの場合、③,④のケースである。

いずれも、TD CLOPWINでは「売れない」パターンとなるのだが、①のケースが下落する可能性は比較的高いと思われるし、②のケースは酒田五法的には上伸の目があるとされるが、筆者の経験則的には上伸確率はあまり高くない。

今度は「買えない」パターンとなるのだが、いかがだろうか。厳密には検証する必要があるが、少なくともこのケースを排除しなかった方が、勝率が上がったということはいずれのケースも上昇する確率のあるパターンと言うことが出来るのである。


上記掲載内容はプレミアムMAX 金融レポートで連載した「新トレーディング手法解説バージョン(2012年9/17号~2018年1/30号)」から抜粋、テーマ別にわかりやすく編集しています。