レンジ収縮とブレイクアウト

3)トム・デマーク

TD REBO

TD SPRING

リンダ・ラリーによるORBのシンプル化

トビー・クラベルの信奉者であり、シンプルなトレード技法を次々と編み出すウィザードであるリンダ・ブラットフォード・ラシュキとローレンス・コナーズは、ID/NR4によるORBを更に単純化した。

計算するのが若干面倒なストレッチの計算を省略し、なんと前日の値幅±1ティックとしてしまったのである。単純さが複雑さに必ずしも劣るというわけでもない。実際のところはORBと「レンジ収縮」とのパフォーマンスの差は実際のマーケットに当てはめて見ないと何ともいえないが、手仕舞いをベイルアウトないしは反対のシグナル発生、としてみると大きな違いはないのではないか。トレーディングルールはよりシンプルなものが望ましいので「レンジ収縮」システムに好感を覚える。

今ひとつのローレンス・コナーズの改革は、トビー・クラベルの技法にヒストリカル・ボラティリティのフィルターを付け加えたことである。

具体的には6日間のヒストリカルボラが100日間のヒストリカルボラの50%以下であることを第1の条件とし、次にIDないしはNR4が成立する必要がある、と述べている。ID/NR4ないしはNR7というトビー・クラベルのオリジナルな条件をこの点では緩和しているが、案外ヒストリカルボラの50%以下というフィルターは強力なので、トビー・クラベルの条件を緩和しないとマーケットに対する参入機会の減少という重大な損失を負ってしまう。

ちなみに、ローレンス・コナーズがこの技法を最初に発表したのは「ヘッジファンドの秘密」という本であったが、この本では10日間と100日間の比較であった。この10日から6日へのファインチューニングに関してはローレンス・コナーズ自身が「短期の動きもうまくとらえるのに役立ち、中期の値動きにも更に適切であるから」と述べている。

ブレイクアウトモード、反トレンドモードのストラテジーは基本的にはトビー・クラベルのID/NR4とヒストリカルボラの組み合わせで見ている。若干ファインチューニングの必要性を感じないシーンがないわけではないのだが、10日に比べると6日の方が圧倒的に勝っている、というローレンス・コナーズの指摘は納得がいくもの、との感触を持っている。

検証の課題としては、ボラティリティブレイクアウトに際して、ID/NR4というチャートフォーメーションの有効性に始まって、GSV、ORB、1ティック、REBO、1日の値幅どれが果たしてブレイクアウトの参入ポイントとして有効なのか、という点。さらにヒストリカル・ボラティリティというフィルターが、本当に損益・確率・ドローダウンといった部分で有利なのかといった部分となろう。

TD REBO(RENGE BREAK OUT)

計算式・トレードタイミング

トム・デマークのレンジブレイクアウト(RENGE BREAK OUT)も、「値幅縮小」をタイミングとして捉え、翌日の「寄付」に加減する手法。

「値幅縮小」の日、具体的なトム・デマークの示唆はないが基本的にはNR7やID/NR4などの日がよいだろう。その日のレンジを0.618倍する。

たとえば値幅が10であれば、翌日の寄付にその数字を加減する。上方へのブレイクアウトは6.18ポイントであるから、寄付が1000であれば、1007あたりがブレイクアウトの参入プライスとなろう。また、売りの場合は1000-6.18=993あたりが、ブレイクアウト売りを仕掛ける価格となる。

このような値幅(上下に0.618倍レンジ)はレンジブレイクアウトのフィルターとも考えられる。つまり、レンジ内の動きや騙しを排除しようと言う試みである。しかしながら、こうしたフィルターを設けた場合(寄付に対して上下に前日の値幅の0.618中立ゾーンが出来る)、以下のケースが問題となる。

*当日のレンジが0.618中立ゾーンに収まってしまう(前日の値幅の0.618X2=1.236倍)場合。

*両サイドにブレイクアウトする場合

最初のケースであるが、これはシグナルそのものが出ないので、あまり問題とはならない。現象としては、IDやNR4などを伴うケースが多いだろう。翌日のシグナルが特に重要になってくるだろう。やっかいなのは、両サイドにブレイクする場合である。多くの場合、OD(アウトサイドディ)となるだろうが、これは最悪のケースとなることが多い。

aに対するbのバー、cに対するdのバーはいずれも、トム・デマークのレンジブレイクアウト(REBO)の条件を上下に満たしている。すなわち、bでは前日高値近辺での買いを行い、さらに前日の安値を抜けたあたりで売りを仕掛けることになる。cに対するdはもっと最悪で、まさに両股開き、往復ビンタである。こうしたディールを避けるために、トム・デマークは以下のフィルターを使用することをすすめている。

*前日の終値の位置。つまり高値で引けた場合(アップ・クローズ)は「売り」のREBOののみを見る。また、安値で引けた場合(ダウン・クローズ)は「買い」のREBOのみを見る。

*前回と同じ方向のREBOを無視する。直近3本のバーで、買いのREBOがすでにブレイクされなおかつ価格がそのレベルにとどまっているならば、同方向へのブレイクアウトは極めて困難になる可能性が高いとみなす。

図で説明するとaの終値は、まさにレンジの100%で引けている。REBOはダウンサイドのみを見る。cは一見安値引けであるが、レンジの位置は常にTR(真の値幅)で見なければいけない。

すなわち、安値は前日の終値である。レンジの位置は真の値幅に対してアップクローズである。もっとも、dのバーで売ったとしても、翌日(e)で、ウップスが成立、一気にドテンしなくてはならなかったが。トム・デマークはREBOを書き続けることで、トレンドの再確認・追加建玉も可能としている。REBOを相場観測法に使おうとは思わないが、ラリー・ウィリアムズがGSVをマーケットに迷ったときに使用したと告白していることから案外レンジブレイクアウトが迷った際、助けになるかもしれない。

GSVやREBOよりも、単純な値幅の大きさ、または詳細な分析を必要とするサイクルを利用するが、サイクル分析は万人に向く方法とは思えない。トレーディングレンジやGSV、REBOを観測する方法も十分にあり得るだろう。


TD SPRING

計算式・トレードタイミング

リンダ・ブラットフォード・ラシュキやローレンス・コナーズまたはラリー・ウィリアムズが力説するレンジ縮小の概念を少し期間を大きくして比較するのがTD SPRING。

<セットアップの条件>

過去18日間を観察対象とする。

A) 13日間の真の値幅(18日前から6日前)と直近の5日間の真の値幅を算出する。

B) 13日間の値幅X50%>5日間の値幅であること。すなわち、真の値幅ベースで50%の値幅収縮が起こっていることが条件である(レンジが13日間の値幅に収まっている必要も、5日間の真の値幅が13日間の真の値幅に対する位置も問題とならない点に注意。レンジ収縮の条件さえ満たせばよい)。

C) 5日間の真の値幅の0.618倍を5日間の終値(REBOは始値であることに注意)に加減して、ブレイクアウトポイントを算出する。

D) ブレイクアウトで参入。

bの値幅は660円、aは270円幅で、bX50%>a(660X0.5=330>270)が成り立っている。aの値幅の0.618倍は167円であるから、ブレイクアウトポイントはaの終値から上下167円(ブレイクアウトは11290+167=11457円と11290-167=11123円)である。cは11400円丁度で寄り、終値が11470円に到達したことから、理想的なブレイクアウトの参入となった。その後相場は12800円にも到達している。

 

99年8月のドル円相場の状況である。大きな13日間の真の値幅は5円20銭、5日間の真の値幅は1円60銭である。これで、ブレイクアウトの参入条件を満たした。

8月31日の終値は110円77銭であるから、ブレイクアウトレベルは

110円77銭

+(1.60X0.618)=111円76銭
-(1.60X0.618)=109円78銭
となる。

9月1日相場は109円76銭で寄付き、最終的には103円台に到達した。

さて、ここで少し13日間と5日間という日柄をトム・デマークがなぜ採用したのか、考えてみたい。

4週間の比較に近いと言うことだ。5日間は1週間そのものであるし、13日間は平均した3週間の営業日に近い(本来は15日であるが、祝日・休日・海外の休みなどを考えると13日に近づく)。実質的に18日間のブレイクアウトを3週間と1週間に分けて条件付けしている、とも考察することが出来るのである。

これはタートルズの20日に極めて近いといえよう。またタートルズ・メソッドの創始者であるリチャード・ドンチャンは「4週間のブレイクアウト」と述べていたことも考え併せると、トム・デマークのスプリングはタートルズのブレイクアウト戦略に1週間のレンジ収縮の条件とフィルターをつけてリファインしたもの、と理解するのが妥当と思われる。


上記掲載内容はプレミアムMAX 金融レポートで連載した「新トレーディング手法解説バージョン(2012年9/17号~2018年1/30号)」から抜粋、テーマ別にわかりやすく編集しています。